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かーびぃのメモ帳

球体の生物が日々感じたことをつぶやくよ!

硝子の棺に眠る君を水底に沈めたい的な性癖の最終処分場

批評等 雑記

 どうもかーびぃです。この前の問題の答え、実は算出できないような気がしてきたぞ。一応あるっちゃあるけど。

 

 「生命のワルツ」という9mm Parabellum Bulletの曲がある。激しい3拍子と高速でうなるギターに乗せて、最終的に死へと収束する生命を歌う曲である。いかにも9ミリって感じの曲だなあ、と最初に聞いたときは笑ってしまった。時に極端にドラスティックに泣きを表現する彼らが好きだ。

 

 というわけで、導入が雑だがさっそく批評していこう。

 今回は、文フリ東京でふと手に取った「木の葉スケッチ」さんの「Re」を読み終わったので、一篇ずつ批評したい。

 これは、「木の葉スケッチ」のメンバーが(おそらく)「生と死」をテーマとして書きあった合同誌で、3名の短編が収録されている。どれも創作意欲に満ち溢れた、文芸部出身らしさがにじみ出るような文章だった。

 「雨に曝されて」

 転枝(ころえだ)さんの作品。このサークルの代表も務めている。避暑地でポストカード屋のアルバイトをしている鈴音のもとに転がり込んできた謎の少女、霊華。ある日、旧友、蓮香の余命がわずかであることを知り、また、その最期の願いが、鈴音の小説を読むことだと伝えられた。大学時代に自らの小説を酷評されて以来、一切小説を書かなくなっていた鈴音であったが、彼女のためにどうにかして小説を書こうと思い立つ。

 霊華の謎めいたキャラクターと、時間が淡々と流れていくさまが非常に印象的。鈴音視点で書かれている地の文で徐々に霊華の呼び方を変えているギミックをはじめ、彼女たちの距離感を自然に描いているところや、全体の流れが以降2作と比べると最も自然で、非常に読みやすい。叙述もくせがなく、また描写に過不足が少ないのもよかった。おそらくもっとも分量のある作品であるが、一番読みやすかった。ストーリーの中心である嵐の絵やタイトルの意味も小説全体の鍵として有効に働いている。中でも目を引いたのは、城嶋さんに関する描出である。キャラクターを最小限の叙述で必要以上に目立たせることなく書ききっている。

 ただ、読みやすさに重点を置かれたもの(とりわけ「書き慣れている」人にはありがちであるのだが)は、どうしても印象の薄い作品になってしまうというところもある。この作品だけとても早くに読み終えてしまったためか、記事にするにあたってもう一度ななめ読みしたときに3作すべてが「生と死」をテーマとしているのではないかという共通点に気が付いたくらいで、最初からその発想があれば、ぼくはもう少し早くこの本を読み終えられていたような気もする。

 「so,I bigan to think about the Death.」

 音無露さんの作品。先ほどとは対照的な、強い引きと重苦しさを引きずった地の文が特徴的。これも先ほどの「雨に曝されて」とは対照的なのだが、非常に物語の推進力を落として、停滞している主人公の心情と重ね合わせる手法がとられている。文章中に混ざり込む哲学の論文と見まごうほどの知識の羅列はまさに逆方向の濁流のようで、むしろ物語を後ろに引き戻しているようなもどかしさすら感じさせられた。非現実的な設定描写と最後のカタルシスの対比は非常に見事で、殴られるような衝撃を覚える。

 ただ、設定の説明や叙述が非常に辞書的で読みづらかった。とにかく読みづらい。前述したとおり意図的なギミックとして物語を進展させないような手法がとられているということには気づいたのだが、それでも度重なる辞書的な叙述展開にはかなりやきもきさせられた。それゆえに結末が非常に鮮やか、と言われればそうなのだが。

 「明日という日が来るまでは」

 七氏野さんの作品。CU病という難病に罹り、余命四日と宣告された主人公は、遠く離れた恋人にプロポーズを試みる。冒頭の展開はどことなく「世にも奇妙な物語」を彷彿とさせるシュールさと薄気味悪さで、かなり引きが強い。また、登場人物がキャラクターというレイヤーを超越し、血の通った人間の会話でとても驚いた。かーびぃは同人世界をそこそこ渡り歩いていると思うのだが、登場人物の会話をリアルにさせることはとてつもなく難しい。もっとも、リアルにさせることに意義があるのかと問われればそれは微妙なところで、地の文との兼ね合いがあるわけだが、この作品においては、架空の病気で苦悩し消耗する一人の人間と、彼を取り巻く人間模様が非常に滑らかに、それでいて血の通っているのが非常によかった。前2作がどこか「二次元的」な映像を呼び起こすのに対し、本作は「三次元的」な映像を想起させる。そういった属性の違いがあった。

 気になった点としては、文章の端々に粗さが出ているような気がした。()内の注釈はもう少しどこか自然に入れられなかったのか考えざるを得なかったし、ところどころストーリーにご都合主義的な部分があることも感じた。逆に言えば、地の文をもう少し丁寧に書いていけば、かなり読みやすいものになるのではないだろうかと思う。

 

 というわけで、3者3様ではあるが、批評をさせていただいた。テーマが暗喩的で、表紙も素朴な文芸誌で、ふとツイッターで見かけたので手に取ってみようと思ったわけだが、前述したようにいかにも文芸部出身の文章といった形で、全体的に枠にはまりながら、己の個性はどこにあるのかを探り続けている痕のようなものが垣間みえた。読ませていただきありがとうございました。

 

 そんな感じで。