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かーびぃのメモ帳

球体の生物が日々感じたことをつぶやくよ!

偏見の塊が常識になっていく

批評等

 

 どうもかーびぃです。というわけで、連続して記事を書くのは久しぶりですが。

 

 ブリグリことthe brilliant greenの曲に「Stand by me」という曲がある。もちろん映画のタイトルにもなったあの曲のカバーではない、オリジナル曲だ。

 もう10年以上前だろうか、大人気漫画「探偵学園Q」の実写ドラマが放映されていたのは。主人公は押しも押されもしないマルチ俳優となった神木隆之介、ヒロインが志田未来、そして山田涼介も出ているという、今から考えると素晴らしく豪華なメンツで飾られていたこの実写ドラマのエンディングテーマとなったのがこの曲である。誰かに恋い焦がれる女性の歌、と一言にいってしまえば陳腐ですらあるこの歌は、しかしながら川瀬智子のたぐいまれなるボーカル力と、程よく明るく展開するバンド、そして少女性を閉じ込めた、大人の女性が過去を振り返るような視点の歌詞の組み合わせが、とても印象的で物寂しさを際立たせるのだ。シンプルかつスタンダードに写実的であることは、つまるところ文学的であるということと同じになるのだろう。

 

 つまりは、僕にとってこれは、そういう本だったわけである。

 

 「ひなげしのまどろみ」著:とく(皮膚と草木堂)

 (評点 通読性:18、宇宙感:16、残響度:17、嗜好:5、闇度:C 合計59点)

 今回の戦利品は50点台後半が多く、55点から59点までの間に8冊中3冊が集中する接戦であった。その接戦から見事シーズン3位になったのは、なんとあろうことか、ぼくが組織する「そりゃたいへんだ。」のメンバーとしても活躍していたとく氏(そりゃたいへんだ。においては「かなた」名義)の単行本であった。

 彼女が大学院を修了するにあたって書いた小説ということもあり、かなり気合が入っているのか、本の装丁にも相当のこだわりが見受けられる。たしか、ぼくの記憶では彼女の専攻は日本文学であったはずで、この作品もまごうことなき純文学だろうと思われる。高校時代の親友から結婚の知らせを受けるところから物語は始まる。このとっかかりの引き込みに、多くの人間はとても苦労するはずなのだが、彼女の文体は、少なくとも迷うことなくすらすらと導入を、物語への引き込み部分を構築していて、改めて地力の高さを感じた。主人公を取り巻く人間関係が、よどみなく、しかしながら完璧な陰影をつけられて浮かび上がっていくさまはリアルで、美術部に所属する主人公が絵を前にした時の心情、そして自らの絵を作成する過程までもが、その知識を全く持たないぼくにすらありありと浮かんでくるのだ。これを緻密な描写力と言わずしてなんといえばいいのか。そしてそれでいて、最後まで一貫して主人公視点の物語であるにも関わらず、どこか冷めたような、冷静な文体で読者を導いている。それゆえに人間関係の暗部のような、曖昧模糊とした言葉の塊のようなイメージを持たせながら、非常に読みやすい。

 これは技術力に定評のある彼女ならではの作品であると思う。もし気になる方がいたら、「皮膚と草木堂」を訪ねてみるとよいだろう。独特のフェティシズムも上品にまとまっていて、一見攻撃性がないように見えるから不思議である。

 ただ、かなり目立つところに誤字脱字があり、もう少し校正に時間を割ければよかったんだろうなあ、という気もする。画竜点睛を欠くとまではいかないけれど。

 

 次回は2位の同人誌についての批評です。個人的には一番書きたいので、こうご期待って感じだ。