日本ごうがふかいな協会広報

日本ごうがふかいな協会の広報ブログです。

消えていくはずの未来をつかみ取っていけ

 どうもかーびぃです。

 

 アドベントカレンダーに間に合うように、かなりの数をかなりのスピードで読んでいる。その中でも高評点(70以上)のものが続出しており、既に選外にもかなりの高評点作品が紛れ込んでいる状況となっている。しかも、まだまだ高評点が期待される作品を多く残した状態で、予想外の混戦となっていることをお伝えしたい。

 

 ということで、今回もここまで読んだもののうち、惜しくも選外となってしまったものに関して、まとめてコメントしていきたい。なお、選外まとめ記事は3件になろうかと予想している。とにかく、最初から強力なメンツが飛び出しているので要チェックだ。

 

「しろたえの島、いつくしの嶺」著:鹿紙路

 いきなり。いきなりステーキですよこれは。ここまでで9作品を読んだのだが、7作品目までは圧倒的トップに躍り出ていた作品であった。が、ここで4位となり選外へ。

 ハードファンタジー、かつ、百合と呼ばれる女性の同性愛(?)を描いた作品。といっても何ら特殊なものではなく、出会ったふたりが恋をして、大陸の南端から北端までのその距離を埋めていくというスタンダードな基本軸と、それを彩る壮大な世界観とうずめられたキャラクター達の「業」が折り重なり重厚な物語へと、文字通り「織りあげ」られている。

 舞台となるのは、布を染める技術の高い、常春の島である「しろたえの島」と、精霊に守られた雪獅子と、かれの世話と記録を中心とした祈り子たちのいる「いつくしの嶺」、この行き来を中心として物語が構成されている。手製本が映える、布文化の美しい風景がそこにひろがっている。

 

「斃れぬ電柱」著:らし(おとといあさって)

 毎度おなじみになりつつある、おとといあさっての変則的な物語だが、今回も電柱型の小説であった。もはや、この電柱型の小説というのがスタンダードではないのか、と思うほど、らし氏のトレードマークとなっているこの形態であるが、今回もどこかあたたかみのある素敵な掌編であった。完成度および電柱型作品の中では現時点で最高評点となっている。物質と魂のファンタジー。

 

「結婚相談員の桐島です」著:ヒビキケイ(シュガーリィ珈琲)

 飲み会で席が近かったことからいただいた作品。体裁が商業の文庫本とほぼ変わらないカバー付きであったところから非常に骨太な物語が予想されたが、中身はゆるやかな現代ファンタジーでブロマンス系作品であった。不思議というか、とても印象に残ったのが、自然なセリフ回しと高い「場」の表現力が非常に高度なリアリティを生んでいるのに対し、地の文は淡々とした説明に終始し、そのピントの差が作品全体の奥行き、主観的に言えば立体感が非常に強い作品であるように感じた。

 新刊の原稿に、おそらくぎりぎりまで詰められたような跡が多く残されており、同じ創作をしている人間としてその汗と涙を推し量ることができてしまうのは、はてさて読者にとってはいかように映るのかはちょっとわからないが、書き手のこだわりが非常に強い作品であるところは言うまでもないのだろうなと思う。

 

「ずんクロRevolutions」著:今田ずんばあらず(ドジョウ街道宿場町)

 「イリエの情景」でおなじみ、ずんばニキこと今田ずんばあらず氏の新刊にして、「みんなのごうがふかいな展」を目当てにする参加者に向けて放たれた、ある種の異色作。ごうがふかいなかどうかはともかくとして、「業が深い」に通ずる何かを感じた。目をそむけたくなるようなおぞましさは、さすがの描写力であるともいえる。氏としてはむしろ旧来のスタイルをとったのだろうと思われるが、今年に入って氏を知った人間からすれば、これはむしろ新境地にちかいアピールである。

 強く強く、その身を知らしめていきたいと思う作品であった。

 

「海に降る雪」著:海崎たま(チャボ文庫)

 海辺のさびれた街にまつわる掌編を集めた短編集。潮風が吹きすさぶ、名も知らされぬその街は、しかし感じられる湿度は意外にも低く、さらに言えば非常に寒々とした風景を感じた。文体と世界観が非常に強く結びついており、前時代感にも通ずるノスタルジックでかつアンニュイな雰囲気が非常に強烈な雰囲気を残している。伝奇にほど近い小説群は、最後の「群青」でしめやかに結びを迎えており、その終わりを含めて美しい作品群となって読者に投げられるさまは、とてもよい読後感をもたらしてくれるだろう。

 

「調律師」著:小高まあな(人生は緑色)

 えー、問題作です。これに関しては思いのたけを正直に文章化すると6億字くらいになるのであえて端的に語りますがこれは非常に、非常に非常に多くの「ごうがふかいな」を含んでいるように思われます。物語の構造、世界観の設定、キャラクターの配置がスタンダードなライトノベルでありながら、特にサブキャラクターの個性が強いところが非常に空間を分厚く表現しており、センテンスとパラグラフの構成、その逐一に感じられる矜持に「作り手とはこうでなくてはならないな」と強く思わされた。作品自体は非常に古い(2011年発刊)し、非常に分量のある作品、そして怪異を取り扱うというところから勝手に拙著の最ごうがふかいな作品群であるところの「The magic nightmare」シリーズを想起させてしまったところはある。しかしそれを差し引いても、この作品が強い「ごうがふかいな」を含んでいるという事実は疑いようがないのではないかと考えられる。

 これだけの分量を持ちながら、すべて集中的に読ませられる工夫が随所に施されているのみならず、かなり構成に趣向が凝らされているのがおすすめポイント。

 これ以上語ると6億字コースになるので終わりでーす!終わり!!

 

 というところで。残りが間に合うかどうかかなり微妙ではあるが、諦めずにやっていきたい。ちなみに残りは14作品。この調子だと25日当日に記事すべてを書ききらなくてはならなくなるので、余裕を持たせたいためにもペースを上げていきたいのが本音。

 

 カンパネルラ~~~~