かーびぃのメモ帳

球体の生物が日々感じたことをつぶやくよ!

のぼりきった山の高さがわかるのは、最初に立っていたふもとの標高がわかる人間だけだ

 どうもかーびぃです。

 

 週1ペースで記事を出していて、アドベントカレンダーまであと1週間と2日。これがおわかりだろうか。つまり、ぼくにはさほど余裕が残されていない。

 

 というわけで、駆け足だがテキレボ6選外まとめ、その2に入りたいとおもう。この時点で、上位ラインが75点を超えている超高度な激戦シーズンであったことを報告したい。しかも、まだまだ高評点を記録しそうな作品は残っている。2017ステージ最後を飾る大混戦だが、それはともかく、惜しくもこの時点で選外になってしまったものたちについて述べていきたい。

 

「ウーパールーパーに関する考察」(上下巻)著:伴 美砂都(つばめ綺譚社)

 非常にスタンダードな線を持ちながら、丁寧に作られている純文学調の作品。タイトルの通り、ウーパールーパーを小脇に抱えながら、ひとりの女子高生の成長をみごとに描ききるという、ど直球一本槍なストーリーラインを抱えている。ひとりの少女が、他人との距離感や社会の感覚、その底冷えした空気にあてられ傷つきボロボロになりながらも、手を差し伸べてくれた人々によって徐々に徐々に自分の道を見出していく。そのさまもなかなかに痛みを伴うもので人によっては目をそむけたくなるような冷たさが内包されてはいるが、しかし、伴氏のゆるやかな(少女目線の)語りによって、すっと頭の中に文章が入ってくる。そして小説も終盤に近付いていくにつれ、傷ついていたのは少女だけではなかったことに、彼女自身が気づき始めるという描写が入れ込まれていて、その絶妙さには驚いた。つばめ綺譚社はもうひとり、紺堂カヤ氏という書き手がいるのだが、このふたりは本当に好対照の書き手で、それゆえにこのサークルは様々なものに挑戦できるのだなあと思った。突き刺さるようなとげとげしさよりも、ウーパールーパーの肌のようななめらかさが、何よりも生かされた作品。青春小説としてはかなり完成度の高い作品だろうと思う。実際、超高評点を記録してはいるものの、惜しくも選外になってしまっていて、本当に惜しい。

 

「きこりのむすこでゆうしゃのササク」著:まりたつきほ(漣編集室)

 語呂がいいタイトル。だがその中身はかなりエキセントリック。同タイトルのお芝居を劇場で見ているような形でこのお話は語られていく。当然、芝居自体の流れがメインではあるのだが、そこに演じている役者のサブ情報(プライベートなものが多い)が流れ込んだり、前回までの演技の内容が入り込んで来たりと非常に畳みかけるようなエトセトラの連鎖がしっちゃかめっちゃかではちゃめちゃで、シュールでシニカルに仕立てられている。劇自体はまったくドタバタしていない(むしろちょっとシュールでアンニュイな感じが出ている)のに、この思考というか、文体というか、とにかく字面のドタバタ感が激しくて、そのギャップで笑ってしまう。そのせいか構造が非常に複雑になっている。じわじわくる、が漣のように押し寄せてくる新感覚シュールコメディ。

 

「人魚のはなし」著:南風野さきは(片足靴屋/Sheagh sidhe)

 たおやかな装丁の、幻想的な短編が編み込まれた作品集。全編を通して、そのセンテンスやワードががちがちに組まれていて、たった4篇、字数にしてもさほどではないはずなのに、非常に重厚に感じられる不思議さがある。しかし、幻想文学的な様相を呈している文体とは裏腹に、ストーリーラインはどちらかというと伝奇・怪異小説に傾いており、そのギャップが非常に面白いなと思った。ストーリーラインとしては(軸がやや複雑さを重視しているがために)むしろ読みやすさなどを鑑みてフランクに書き換えがちな者が多い中、あくまでこのスタイルを貫き通すその矜持こそ「ごうがふかいな」がにじみ出ている。こういう美しさも同人世界の中にしかないものだろうと強く思わされた。

 

「贄と邪竜」著:藤ともみ

 えー、これはかなり生、というかごうがふかいなそのもの、というようなスタイルの作品です。公式アンソロに投稿されていた作品につづきを付け足したものなんですけど、もうそのアンソロ投稿部分ですら「この人ごうがふかいなで言えばランカーだわ」となるほどだったのですが、全編通して読んでもそれが変わらないどころか強くなっていく一方で困った。ごうがふかいなが魚だとすると、この作品は刺身です、刺身。

 とかなんとかどうでもいい話はおいておくとして、ストーリー自体はシンプル。双子の片方がいけにえに捧げられるのを気に病んだもう片方が入れ替わってしまい、残された方がいけにえになった方の仇を取ろうとする、っていう話。もうこの筋の時点でごうがふかいな一直線感がバリバリバリクソンなんですけど、この筋通り、本当に、こちらの期待を裏切らないという点においては圧倒的ともいえるくらいの完成されたストーリーとキャラクターが、もうなんというか本当にすごい。人はすごい時にはすごいとしか言えないって何度も言ってる。今回も言った。

 次回の「みんなのごうがふかいな展DX」に参加をお待ちしております。

 

銀河鉄道の夜の夜の夜の夜」著:遠藤ヒツジ(羊目社)

 宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を元にした、なんだろうあえて言えば1.5次創作みたいな作品。元の作品に4回、微分積分を重ねている関係で「の夜」が増えてしまったらしい。らしい、というのはぼくが微分積分をよくわかっていないからで、多分微分積分を知っている人はそんなわけねえだろとツッコミを入れてくることだろうが、そんな人はこの記事を読まないと思います(決めつけ)。

 と、もっともらしいことを書いたが、銀河鉄道の夜を読み込んでからこの作品を読んだときの印象はまんまその感覚で、だから銀河鉄道の夜そのものに寄り添いながらも、それを俯瞰し、その俯瞰を俯瞰し、その俯瞰をさらに俯瞰しているみたいな、不思議な多層性がこの作品の大きな軸になっている。全体がどことなくエロティックな動きをしているのだけれど、それでいてかつ宮沢賢治のオマージュであることを忘れさせない「イーハトーヴ」みの溢れるポエティカルにしてファンタジック、それでいてノスタルジックな小説。遠藤氏の技術力と「銀河鉄道の夜」という、ひとつの未完作品に対しての敬意と熱情がこれでもかというほどに込められた作品。

 気がつけばみんなも銀河鉄道に乗っちゃう感じの。

 ギャラクシーエクスプレス(ry

 

 というわけで、残るは6作品。ここで読みブーストをかけて、どうにかアドベントカレンダーに間に合わせたい。本当に間に合うかどうか非常に微妙なところなので、間に合わなかったらごめんなさい。

 ちなみに今もうすでにちょこちょこ書き始めてはいるんだけど、自己紹介の時点で伊集院光深夜の馬鹿力並みに脱線しまくっていて字数がひどいのでつらい。