日本ごうがふかいな協会広報

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前橋行者ニンニクせんべい

 どうもおもちくんです。そんなものはない。

 

 さて、文フリ前橋シーズンが確定したので、まずは選外まとめから書いていきたいと思う。

 

「ひとつの夜明け前」著:ぺの(New 原始人)

 短編集自体は全体を通してシンプルな作りで、ゆめうつつなところを表現する気持ちの悪さ、みたいなものを主体として書かれていたものだったのだが、それ以上におどろいたのが、この作品群がラジオ上で連載されているということだった。ラジオ番組に小説を連載できる場があるのか!と思わずうなってしまった。そんなプラットフォームを考えたことすらなかったからだ。ぼくもそんな番組を作りたいなと思った。

 

「水曜日しか知らない愛情/僕の訃報が僕から届く」著:Debby Pump

 これまた素朴な歌集。ぼくは短歌の素養がほとんどないから、これがどのような表現技法なのか、まったくわからないのだが、とにかく素朴なのだ。奇をてらっているさまさえ素朴に見えてしまう。コピー本ゆえなのかもしれないが、それすら作者が選択したのであればすごいものだなと思う。

 

「艦娘妄藻録」著:青銭兵六(POINT ZERO)

 ハードボイルドな作風で有名な青銭兵六氏による、「艦隊これくしょん(艦これ)」の二次創作小説集。三種の艦船に関して、ひとつずつ丁寧に描かれている。艦娘、に限定されないその描き方は、氏が艦娘というひとつの微分されたキャラクターのみならず、元ネタの艦船までも愛しているというひとつの意思表明のようなものだろう。誠実な艦これ愛を感じる作品集だっただけに、氏の持ち味であろうハードボイルドさや皮肉さはすこし影を潜めている。

 

「あなたも私もある種の図形」著:紙男(シキシ文藝)

 紙男氏は前回のテキレボだったかでフォローさせていただいたのだが、この人の「ついのべ(1ツイートで完結する小説様の散文)」はなぜか読めてしまうので、ずっとフォローしている。ぼくはついのべというものに否定的である。自分で創り出すことが出来ないところによるひがみがあるのだろうと思うのだが、なんというか妙な嫌悪感があってなかなか積極的に見ようとは思わなかっただけに、紙男氏のついのべを普通に読んでいる自分がどこか不思議なのだ。とはいいつつも実はこの短編集についのべは関係ない。図形をモチーフにした短編集で、ショートショートのようなキレのある小説が並ぶ。星新一のようなユーモアもあり、西尾維新のようなぶっとびエンタメもあり、かなりの振れ幅を見せながら、紙男節、のような独特なセンスを失わない稀有な作品集であるように思う。図形のアラカルトでありながら氏の文体アラカルトでもあると思う。

 

「微睡する自律演算装置」著:三日月 理音(HONKY-TONK)

 世界観が非常に好みだった。ある国で代書屋を営んでいる青年の運命についての短編。中盤からの怒涛の展開は非常にわくわくするし、このような二段構えが本当に好きだ。あんまり細かく書いてしまうとネタバレになってしまうところが惜しい。

 

「Radioactivity」著:Debby Pump

 これは、なんというか、もっとたくさんの人にきちんと読んで欲しいな、と思った。短編集なのだが、タイトルは「放射能」の英訳であることが収録作からわかる。その名の通りというか、この作品のすべてに、潔癖なまでに通底しているのが「犠牲者への祈り」で、その概念がおそらく東日本大震災に端を発しているのではなかろうかと思われる。関東でも、九州でも、台湾でも、タイでも、どの舞台においても、作者による静かな黙祷がある。これはすさまじい。氏は朴訥な文体を基本としているだけに、それがとてもよく表れている。そして前述したように舞台がワールドワイドなのである。東日本大震災に端を発したであろう祈りなのに、その範囲が日本を超えてリンクしていく。素朴なコピー本に収められたものとしてはあまりにも大きなテーマであるが、しかし、だからこそのコピー本なのだろうな、とも思う。

 これは単純な感想なのだが、多分、この作品集は横書きの方がより素晴らしさを感じられると思う。なんとなく、縦書きは閉じた印象を与えてしまうような気がするのだ。

 

 以上が、惜しくも選外になってしまったもののコメントである。

 特に、最後にコメントした「Radioactivity」については、本当に記事化したいくらいに素晴らしいものであったのだが、惜しくも3位との記事化争いに敗れてしまったことをここで付け加えさせていただく。

 

 さて、3位は前ステージでもその力をいかんなく発揮した、あの人の新作である。

 近日、記事化予定。