日本ごうがふかいな協会広報

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タケノコのキムチ

 どうもおもちくんです。

 2018年もあとわずかになってしまった。今回は急がなくてはならない理由はないが、かといって半年以上遅延してしまっているので、できるだけ急ごうと思う。

 そんなわけで、文フリ東京26シーズンの登録作品の評点化処理がすべて完了した。今回は、選外まとめ前半として、惜しくも記事化に至らなかった作品たちにコメントしていきたい。選外まとめは今回と次回、そして記事化は3本、計5本の記事で文フリ東京26シーズンは構成される予定だ。

 

「雨街で残響 上」著:転枝(木の葉スケッチ)

 SFと純文学を掛け合わせた、というのがキャッチフレーズとなっている転枝氏の渾身の作品。上下編に分かれているがこのシーズンで上巻を、6月の静岡文学マルシェで下巻を手に入れたので、それぞれ別シーズンでの登録となる。なお、複数巻にわたって物語が続いているもので、かつ、各巻で小説が完結していない形のものに関しては、前巻の評点が一定の条件を満たしたものについてのみ読了処理を行い、それ以外は未読了処理とする、という変則ルールがある。この作品については上巻がそれを満たしているため、下巻も静マルシーズンに参加することとなる。

 作品について語ると、退廃した近未来の日本を舞台に、異形の怪物たちを倒す主人公たちの物語で、その骨格だけでいえば完璧にSF方面のエンタメ小説であるのだが、彼らもまた生身の人間とは大きく異なっていたり、それを取り巻く環境が複雑であったりと、物語に深みを与える要素として純文学というキーワードが間に入り込んでいくような構成となっている。非常に多くの人たちに手に取られた理由はこの辺であるように思う。純文学のエッセンスをふんだんに取り入れながら、展開や世界観はエンタメのそれであるというある種の正面衝突のような趣は、同人小説ならではといった感が強くて、その手法に感嘆させられた。純文学成分の取り出し方がサブカル系の手法であるというところも少し面白いと感じたところで、あらゆる意味でエポックメイキングであるように感じた。下巻の展開がまだなので、どのようにストーリーが展開されていくのか、ふんだんにちりばめられた純文学たちがいかにまじりあっていくのか、というところにすごく興味がある。

 

「鯨の兄弟」著:海崎たま(チャボ文庫)(レート:B)

 毎日がエブリディなツイートでおなじみの海崎たま氏による短編集。普段のツイートからは想像もつかないような作風であることはこの前述べたが(述べたっけ)、今回も全体として陰鬱な風景が漂う純文学的な作品が多く、どこか硬い文体と淡々と非日常を描写していくさまが見事だった。

 

「きれいごと」著:酒井衣芙紀(無芸)(レート:A)

 ぼくの見ている範囲での話だが、この2年ですさまじいスピードで活動の幅を広げてこられた、詩人にして作詞家の酒井氏による詩集。これまでのものよりもさらにポップさが増し、その中でもよりアイロニーを強めているのが特徴だろうか。歌詞として上梓したものも収録されており、全体として「みられる」ことを強く意識された作品集であるなあと思った。ぼくはどちらかというと氏が持つ感性を生かしたような詩の方が面白いと思うのだが、氏の、これからの方向性というところがすごく垣間見えたように思った。

 

「追篇」著:齊藤(レート:S)

 前ステージ内のテキレボ6シーズンで凄まじい短編集によって83点を記録した齊藤氏の、これまた何かの墓標のような短編集。綴られることばの強度と密度が、本当に同じ日本語で書かれた小説なのだろうかと感じさせられるほど。多くを語るのは難しい。

 

「soyogui,その関連」著:泉由良(白昼社)(レート:S)

 今ステージでずっと記事化されてきた泉由良氏の短編集。短編集としてすごくまとまっているなあと感じた。小説と詩が混ざり合った作品集なのだが、それらが互いに独立しながら連綿と続いていくさまはさすがであるし、そういった意味でこれはひとつの作品集である以前に作品であるともいえる。そこまでの完成度の同人誌って実はそんなにない。ということで記事化確定だろうなと思っていたのだが、僅差で記事化ラインから外れてしまったのが自分でも意外である。

 

 というわけで、前半5作品について述べた。今回はレートがついている書き手が多く、ノンレートはやや冒険したため、総じて評点の平均が低かったが、それでも上位は激戦だった。

 近日中に選外まとめの後半も書きたい。