ひざのうらはやおのメモ帳

サイコパスクソメガネが祈る墓標みたいなやつ

遠い世界の出来事をすぐそこにあるみたいに考えられるその想像力を社会に活かせ

 どうもひざのうらはやおです。

 考えてみれば、この挨拶でシーズンレースの記事を書くことになるとは思わなかった。

 

 椎名林檎の曲はだいたいあんまり好きじゃないので、強いていうなら「丸の内サディスティック」だけはいろいろな思い入れがあってなぜか狂ったように聞いてしまう。一種の自傷行為みたいな。

 マクラ曲とかいらねえから。

 

 静マルシーズンに入ったのは文フリ広島の頃だったので、4か月くらいかかった。かなり長い。お待たせしました。

 まずは、惜しくも選外になってしまったみなさんから。

 

「平成五年のメタモルフォーゼ」著:本目詩水 天ノ川聲音

 平成五年生まれというふたりがユニットを組んで出した本。というまさにそのままの作品集。同年代の人間が紡ぐゴリゴリの純文学でありながら、ゼロ年代の空気を纏っているというのが鮮烈であった。ふたりともぼくには書けないみずみずしさがありながら、確固たる軸が見えているというのがとても印象的。

 

「埃をかぶった幻」著:烏兎緩々

 とある文芸サークルで起きた、謎を解き明かしてくミステリー風味の短編。小気味よい展開が、読む手を止めさせない。それだけにオチのまとまりはとても納得であった。表紙も小説にすごくマッチしている。読み終わってからもう一度表紙を見てみよう。

 

「普通の矜持」著:森村直也(HPJ制作工房)

 前日の打ち上げでなぜか記憶に残っていた森村さんからひとつ買わせていただいた。短い文章にこれでもかというほと情報を載せられていて、密度というものの奥深さを思い知った。SF的でパラレルワールドのような不思議な世界観だが、主人公の「製品」としての有能さと、それをそれとして描かないところにむしろ矜持を感じた。

 

「崩れる本棚 7.0」著:ウサギノヴィッチ ほか(崩れる本棚)(レート:1.224)

 そにっくなーす氏の作品がきになって手に入れた。古き良き(?)文芸よろず本のような印象を受けた。自由で、それでいてどこか同じ方向を向いているような。味わい深い。

 

零点振動」著:宇野寧湖(新天使出版会)(レート:5.92)

 以前テキレボかどこかで買った記憶があるのだが、その時は1巻だけだったのでその続きを手に入れてみた。完結しているかどうかが微妙にわからない(たぶん、まだ続くのではないかと思っている)ので、ここまででひとくぎりとしてコメントする。

 主人公の女性がかなり魅力的。宇野さんの書く女性は好きだなあと思う反面、おそらく氏がより力を込めていそうな男性キャラクターの印象が残っていないのはなぜだろうな、とつくづく考える。ぼくが男だからなのかもしれない。洋ドラ風味な展開と雰囲気ですらすらと入っていく。そういうものがお好きな方はぜひ。

 

「凱歌」著:凪野基(灰青)(レート:6.427)

 おはなし職人の放つハードハイファンタジー長編。緻密に物語を作り上げる氏が長編を作り込むとこうなるのか、というすさまじい密度と、情け容赦のない展開。読み応え抜群である。特に後半、怒涛で息をもつかせない、それでいて容赦がない展開が続く。それだけに最後の清々しさが救いになる。ここまで読んできた中でもトップクラスの緻密さを誇るといえる。ハードなファンタジーが好きな方はマストである。

 

「ゲンシ」著:遠藤ヒツジ(羊目舎)(レート:6.038)

 不思議な雰囲気を漂わせる、氏の夢現が入り混じるような作風の短編が詰まった作品集。とくに2つめの「体はあなたのもとに」がとても好き。淡々と非日常を描いていき、その上に登場人物の感情を塗りかさねていくのが、氏の作風なのかもしれないと思った。おすすめの一冊。

 

「僕の真摯な魔女」著:まるた曜子(博物館リューボフィ)(レート:5.920)

 氏の作品で最初に読んだ「野をゆくは魔女と景狼」と同じ魔女シリーズ。シリーズに共通する魔女という存在の設定を活かした物語に、こちらもなっている。この魔女の設定がとても好きである。恋愛と性愛、そしてそれらと繁殖が別個の感情もしくは本能として身体にプログラミングされているというのが惹かれるポイントなのかもしれない。氏の文体は渓流のように、静寂なようでいて強いエネルギーを持ち、しかも同じ方向に流れ続ける、そんなもののように思える。

 

 選外作品は以上。今回は高レートの書き手が多く、評点も実は非常に荒れた。5位までが120を超えている。ぼくの中では120が、「いい作品」と「すごくいい作品」を分けるボーダーであるように感じていて、120以上が記事化の対象だろうというイメージで評点化をしているのだが、今回は、とくに3位争いが非常に激しかった。

 3位の作品は、静マルシーズンの中でも期待をもって読んだ作品である。ぼくはこれを記事として紹介できてよかったと感じるような、そんな作品だ。

 こうご期待。