日本ごうがふかいな協会広報

日本ごうがふかいな協会の広報ブログです。

そしてみんな、いずれはどこかへかえっていく

 どうも、ひざのうらはやおです。

 何度もこの記事を書きかけて、いつも何かに邪魔されたせいで1年くらい温めてしまった。この作品の書き手にはこの場で謝らせてください。すみませんでした。

 

 最近、とある縁で(どういう縁かはいくつか記事をさかのぼっていただければおおむね想像がつくと思う)インディーズバンドの音源を探すことが増えた。なかでも、ぼくにすこし縁のあるノクターンというバンドがすごいと思うというはなしはしたが、そのイベントに来ていたボールプールというバンドの世界観の表現が非常に卓越していておどろいた。聞いてほしいのでその代表作である「Ghost」のMVをここにはっておく。

www.youtube.com

 独特のリリックとリズム隊を中心とした統制のとれきった演奏が見事で、そこから演出される寂寥感と清涼感がなんとなく夏を思い起こさせる。ぼくはひそかにかれらを「令和のTUBE」とよぶことにしている。ファーストアルバムと出演していたライブの曲はいずれも夏を彷彿とさせる爽やかさと独特の熱気が特徴的で、そして地に足のついたサウンドとどこか耳に残るリリックがなんというか、これからの青春の夏、みたいなイメージがすごくずっとしている。懐かしいようなそれでいてあまり聞きなれないようなそういった音像を浮かび上がらせることのできる、かなり技巧的なバンドではないかと思っている。

 この記事で紹介する作品も、どこかそういった寂寥感と清涼感を共に内包しながら、よりエモーショナルな展開を見せていたように思う。

 

「還る ―伊豆小説作品集1―」著:清森夏子(イノセントフラワァ)

文体:32 空間:34 (半客観分野:68)

感覚:33 GF:39 (主観分野:72)

闇度:0.702 レートなし 総合点:138.702(静岡文学マルシェ1位)

 

 ということで、激闘の静マルシーズンを制したのは静岡の書き手である清森夏子氏(当時の名義)であった。以前「イヤサカ」という作品を読ませていただいて、非常に読み手を巻き込んでいくタイプの書き手であり、その力がすさまじいと思っていたが、こちらの作品集も静かでありながらやはりその力が強く、非常にエモーショナルな文章が続く。文フリ福岡の途上、ぼくはこの作品を読みながら号泣していた。伊豆という風光明媚であり、海と山に恵まれ、どこか爽やかな印象のある地で繰り広げられる、春の嵐のような目まぐるしくも感情豊かな小説群。改めて清森夏子氏の実力というものを思い知った。しかもこの作品群は2015年、つまり4年前に刊行されているというのだから驚きである。地に足をつけながら、それでもなお生きていくひとびとの業をたしかにとらえながら、それでいてすべてにその人生それ自体の見せ場をしっかりと踏み込んで描くというこの、シャッターチャンスをつかみ取れる才能のようなものには本当に脱帽としか言いようがない。とくに「紫陽花の君を恋ふる話」はたとえばぼくがおなじプロットを書いたらきっと陳腐でおもしろみのないものになってしまうなと思うのだが、氏の手にかかればすさまじく起伏の飛んだ、エモーショナルなドラマへと早変わりするのである。現在は諸事情によりなかなか活動が難しい状況のようであるが、ぜひまた素敵な小説を書いていただきたいものだ。

 

 さて、ここで静マルシーズンを1年越しに終わらせたわけだが、実はここで大事なお知らせをしなくてはならない。結論から書く。

 

 本シーズンをもって、シーズンレース企画を終了させていただきます。ご愛顧のほどありがとうございました。

 

 その理由であるが、お恥ずかしいはなしであるのだが、どの作品をいつ買ったのかというリストを作っていたのだが、それが機能しなくなってしまい、どれをどのシーズンに買ったのかを把握することが不可能になってしまったことによる。すなわち、シーズンを開催しようにも、その作品がどのシーズンに属するのかがてんでわからないので、レースのしようがないということである。そのため、以後は評点化を含めて序列化をとりやめ、読み終わり次第ひとつひとつ感想を書いていこうと思う。

 以後の感想については、こちらのメモ帳か、もしくはNoteでアップする予定なので、見かけたらぜひ読んで欲しい。評点をつけないぶん、より踏み込んだうえで主観的な感想を書いていくつもりだ。

 志半ばであるが、このような形でさまざまな同人誌を読んで、自分なりに順序をつけられたことはぼくの中で大きく役に立った。ひとによっては、だれかの作品に点数をつけて順列化するなんて、と眉を顰められたこともあったが、これはぼくが勝手に並べたものであって、だからこそぼくがぼく自身を知るために非常に役に立った。他の方には到底勧められないが、そういう形で作品をたくさん読んでみるのも、案外悪くはないだろうと思う。

 今後も、復帰に向けて様々な試みを行っていく予定であるので、ぜひそちらも応援していただければありがたい限りである。