鉛の弾が死因になるとは限らない
どうもかーびぃです。
というわけで、あまぶんシーズン選外まとめその3です。今回はもう70点以上の作品しかないので、そのすごさがわかっていただけるよう、評点も同時に公開しながらのコメントとさせていただきたいと思います。(なお、内訳に関しては伏せさせていただきます)
なお、この調子だとあまぶんの選外まとめだけであと4本くらい続きそうです。
では、さっそく。
「嘘の街を出ていく」著:らし(おとといあさって) 74点
体裁からして非常に興味をそそられる不思議な本であったが、中に収められている物語は美しく完成されており、それでいて強烈な読後感をもたらしてくれる。70点以上ともなると、どこかが尖っているタイプの作品がほとんどを占める中、この作品は心の底から何か、あたたかいものがこみあげてくるような、不思議なテイストで、完成度が高く全体的にバランスが良い。実はかなり最初の方に読んでおり、しばらく2位にとどまっていたがここ数冊の強力な布陣の前に選外へと押し出されてしまった。というか74点で選外ってどういうこっちゃ。
「キスとレモネード」著:彩村菊乃(キスとレモネード) 70点
このタイトルは本当に名は体を表すといったような、この作品集の読後感そのまんまで、つまるところ非常に甘酸っぱくも爽やかで美しい小説がつまりに詰まった短編集なのであるが、個人的には巻頭作の「緑のまにまに」の空気感が好き。カップルのいちゃつき、というと少しアレかもしれないけれど、恋人同士のやりとりと心理描写、みたいなのが非常に細密で臨場感あふれる感じになっていてこちらも少し気恥ずかしいような、そんな気分になる。これも非常に完成度の高い同人誌と言えると思います。もうほんと記事にならないのが不思議なんですけど、この時点で上に何冊もあるっていうのがもうほんと何このシーズンあたまおかしいんじゃねえのって。
「手ノ鳴ルホウヘ」著:紺堂カヤ(つばめ綺譚社) 73点
これ!!!!!!!ほんとねえこれの記事を書きたかったんですよほんと。ぼくが連載しようとしている青春バンド小説(ごうがふかいなともいう)「エイジドボーイ・シンコペーション」のガチ版というか、もうほんとこれはすごいとてもよい青春バンド小説ですね。視点は2人のものを入れ替えながら書いてるんだけど個人的には奏ちゃん(ドラム)が主人公かなと。彼女のキャラクターとバンドの軸となる深水くんの音楽馬鹿っぷりが激しい。これが野球になるとそのタイプの漫画はもうわんさかあると思うんですけど、Jロックの文法の中でこのような作品が出てくるということ自体ぼくはすごいなあと(自分でも書こうと思っていただけに)。みなさまぜひご拝読ください。
おそらくぼくがここまで読んだ同人誌の中で、小説単行本というジャンルの同人誌それ自体のクオリティとしてこの「手ノ鳴ルホウヘ 完全版」以上の作品は見たことがありません。絶妙な尖りと爆発的な若さというエネルギー、そしてそれだけでは終わらせない強固な骨組み。これぞ同人誌なのだというつばめ綺譚社渾身の作品ではないかと。
ひねりとまっすぐさ、その両立がこの作品の最も克明に描けている部分かなあ。とにかくすばらしいです(語彙力)。72の壁を破壊してきた数少ない作品です。
「野をゆくは魔女と景狼」著:まるた曜子(博物館リューボフィ) 72点
まるた曜子さんについてはこう、少し遠い存在だったので今回でようやく本を手に取る勇気が出たので、委託という形ながら手にしてみたのですが、これに関しては非常に高いレベルの「ごうがふかいな」だと思います。そしてとてつもなく美しい物語です。なんとなくのイメージなんですけど寒々としたフィヨルドやら針葉樹林やらが延々と広がっているスカンジナビアの大地がこう、何度も頭の中に出てきて、そんな中で魔女と狼がどのようにして生きてきたのか、そしてどのようにしてその生を終えていったのかがよどみなく美しく綴られています。この力は恐ろしいと言わざるを得ない。あと巻末に付録されている交歓のシーンのなんというか、お互いめっちゃ幸せそうにセックスしてんな、みたいな感じがすげえばんばん前面に出ているように書かれていて、うわあ、うめえ、って思わず独り言を漏らしました。72の壁に阻まれましたがとてつもない作品のひとつだと思います。
以上、非常にレベルの高い4点。これが選外まとめだということを忘れさせられる。
そして文フリ大阪までに全部を読み切れない可能性が出てきた。その場合はあまぶんシーズンを先行させてから文フリ大阪シーズンをやりたいと思います。よろしくお願いします。