ひざのうらはやおのメモ帳

サイコパスクソメガネが祈る墓標みたいなやつ

最後に残るのが何であったとしても誰かがそれを見届ける必要がある

 どうもおもちくんです。

 文フリ金沢シーズンの記事を書くのにだいぶ日数がかかってしまった。今回が最後の記事である。

 

 坂本真綾といえば、何を想いうかべるだろうか。ガンダムSEEDのルナマリア、FF7のエアリス、空の境界両儀式、などなど声優としての姿か、歌手としての姿か、はたまたラジオパーソナリティとしての姿か、舞台俳優として、もしくは鈴村健一の奥さんというイメージの人もいるかもしれない。つまりそれだけ彼女は多彩に仕事をしていて、なんとなくぼくの中で、その多彩さと芯にある表現力というのが一体となっているなと感じるのが、第3シングルの「奇跡の海」である。ロードス島戦記シリーズ作品のアニメOP曲となった、どこか異国情緒の強い曲で、アマチュア合唱団に合唱曲化されたり、歌ってみたで検索すればかなりの数の動画が出てきたりと非常に人気で、とかく表現者にとってひきつけるものがあるのだろう、その動画の質も軒並み高いように思う。まあ、単に節回しが歌いやすいというのもあるかもしれないが。

 

「パンドラの子守唄」著:赫玉辛子(赫玉書房)

文体:32 空間:31 (半客観分野:63)

感覚:30 GF:30 (主観分野:60)

闇度:0.42 レート:なし

総合:123.42 (文フリ金沢4シーズン1位

 

 ということで、文フリ金沢シーズンを制したのは、赫玉辛子(あかだま・からし)氏の短編集であった。この方、別名義でプロとして活躍されている方で、そういったところも含めて安定だなと思って読んでみたのだが、表題作含め非常にダークな世界観と十分な熱量を帯びたままの社会に対する憎悪がストレートに表現されていて、この表現力と主張の力強さを正直に欲しいと思った。それでいて、どこか異世界のような雰囲気を帯びているのも不思議だ。特に、巻頭作の「ブラック・ゴシック・リバイバル」はどことなくスティーブン・キングのような趣で、引き込まれた。この引き込みがなければこの独特の、胸がすくようでどこかもやもやとしたものが残るような不思議な読後感を出すことは出来ないように思う。すべての作品が短編集を作り上げるために重要な役割を果たしており、その点で非常に完成度が高いなと思った。

 

 文フリ金沢全体で思ったのが、やはり文体そのものの味を引き出しているような作品が多くて、もちろんぼくがそういったものを好んで買っているということは否めないのだが、そこがほかのシーズンと大きく異なっているところだと思った。そして、その最たるものが今回1位となったこの作品である。様々なジャンルを忍ばせながら、そこに入る強烈な憎悪と批評性からくる描写、普遍性の高い物語にのせられる、クセの少ない文体。これらがしっかりと組み合わさって、ひとつの作品群、短編集として現れることの妙である。この作品に限らず、同人誌としての完成度が高い作品が多かったのが総じての印象だ。

 その割に評点がひかえめなのは、ぼく自身がやはりジャンクな味を好んでいるということを暗に示しているのかもしれない。逆説的、というか自己批評的でもあるが、シーズンレースでの評点は、同人誌としての完成度とイコールではない。完成度が低い作品が、高い作品のそれを凌駕していくなんてことはこの2年やってきても枚挙にいとまがないほどであるし、それは読者のみなさんも感じていることだろうと思う。だからぼくはこういった場ではその完成度についても正直に言及していきたい。

 

 ということで、文フリ金沢4シーズンについてはこれで終了である。次回はようやく、静マルシーズンへ突入だ。昨年のMVWに輝いた佐々木海月氏が満を持して登場したり、総合点1位を堅持する丹羽夏子氏の作品が入っていたりと、今から読むのが楽しみである。