何がそりゃたいへんかなんて実は誰も知らない。
どうもかーびぃです。
今日も今日とてとくにネタが思いつかない。あんまり自分語りばっかりでもあれだよねえ。かーびぃは自分語りはやぶさかではないのだが、ブログってそういうものではない感じがすごくする。別にメモ帳だからなにやってもいいんだけど。
なんとなく、思っていたことの中で、これは書いておく必要がある、というものがいくつかあるので、そのうちのひとつ、ぼくが代表を務めるサークル、「そりゃたいへんだ。」についてと、その最新刊についての批評をしてみようと思う。
「そりゃたいへんだ。」は昨年の春に文学フリマ東京に初出展したものかきユニットである。現在、ライターとして6人、非ライターとして2人のメンバーを抱えている。活動としては年に2回、合同誌を発表するだけにとどまっている。それは、このメンバーがぼくを含めて社会人が大半を占めるということ、またそれぞれが別々のプラットフォームで活動するというのが基本となっていることが大きいだろう。特にメインライターを務める藤宮南月先生は他のサークルでも精力的に活動しているためかなり多忙だ。正直こちら側に時間を割いて貰えるだけかなりありがたい存在である。
とまあ、辞書的な説明はこのくらいだろうか。
メンバーとして求められるのは強烈な個性とわずかな良識、これのみであると考える。代表、つまりぼくがその両方を兼ね備えていると認めた者で、かつメンバーに加入する意思がある者をメンバーとしている。自分の道を譲るようなタイプや、非常識なタイプはメンバーとして適さないという風に考えている。もっとも、ぼく自身が考える範囲での良識であるので、全体から見ると必ずしも良識があるとは言えないのかもしれないが。
ということで、現状面白いようにゆるゆると活動している。ここから先、活動のスタイルが変わっていく可能性が高いだろう。それは決定してからお伝えする。
さて、そりゃたいへんだ。の新刊「そりゃたいへんだ。~私立しまりすが丘学園の時間割~」について、自著を含んだうえでの批評を行う。一部ネタバレもありうるので、未読の方は注意されたい。
本書は1時間目から6時間目までそれぞれの科目で1篇の短編を綴ることになっている。時間帯と科目については、早い者勝ちでの選択とした。その創作の性質上、今までと大きく異なるのが、編集順が最初から決定されているというところで、つまり各短編の流れで順序を調節するという手法が取れないところにある。これによって本書は今までにない強い流れを生み出したように思う。読み進める推進力こそ低いものの、各短編の個性を幸か不幸か、最大限に引き立てあうような構成になっており、アンソロジー感が非常に強い。だからこそ、ぜひ1時間目から読んでいただきたいものとなっている。
さて、以下から各作品の批評に入る。
1時間目~国語~「それゆけ! オカマ式部ちゃん」藤宮南月
国語、といっても古文をテーマとしたもの。タイトル通り、オカマの式部が奔走するという話だ。叙述が非常にビジュアルを想起させやすいのが藤宮先生の特徴であるが、本作においてはそのテンポのよさも特筆すべき点である。独特の繊細さを持つ文体をチラ見せしつつ、ひたすらボケ倒しにくる感じはかなりいやらしい。完全に外角低め、打てそうで打てない変化球のような代物である。笑いどころがあるようで全くないギャグ小説だ。
2時間目~体育~「だから大磯君は人間になれない。」ムライタケ
「そりゃたいへんだ。」の個性ことムライタケ氏による、青春小説(青春小説とは言ってない)。学園という環境特有の、各人のやや狂った嗜好もとい思考もとい指向を、臨場感あふれる視点で、醒めたように描いている。ムライ氏独特の言語センスは健在だが、前作および前々作と比べるとかなり控えめの印象。ふわふわとしたファンタジー感を丁寧に掬い取って、リアルに沈めていったような、仄暗さが全体的に漂う作品。あらゆる意味で1時間目とは異なる作品。
3時間目~理科~「余弦電波理論」ひざのうらはやお
拙著。このブログをよく読むという人にはおすすめだ。何故かと言うと序盤から終盤まで一貫してこのブログとほぼ同じような、素のぼくの文体がひたすら続いているからだ。自分でもここまで延々と何の盛り上がりもなくだらだらしきって1万字を書ききるというのはかなり久しぶりだった。ピロウズが好きな女子高生と化粧っ気のない女教師の日常、という芸も華もないノンジャンル小説。ピロウズを聴いている人だと1.5倍くらいの面白さになると思う。というかピロウズを聴かない人は面白さが2/3に削減される、という言い方が正しい。あらゆる意味で力のこもらなかった力作。
4時間目~英語~「トミー・サムも知らない」かなた
マザー・グースの詩を織り交ぜながら、教室内の出来事を各人の視点で淡々と語っていく形式。視点の細やかなパスワークは、かなた女史の緻密な構成力をもっとも活かすポイントであり、そう言った意味では彼女の強みが前面に押し出された作品と言える。個性豊かなキャラクターを繊細に描いているところも魅力のひとつである。
5時間目~数学~「恋愛指数」穂積浅香
極めてシンプルな構造のライトノベル。ローテンションな穂積氏の作品の中でも、非常に典型的なテンションの低いラノベ系主人公と、これまた典型的なやたらとセリフの長いラノベ系ヒロインによるボーイ・ミーツ・ガール風。文体のやわらかさととりとめのなさ、そして棘のなさは本書の中でもぶっちぎりである。ここまで読んできた人にはひとときの休息のように思われるような、そんな癒し系の小説である。
6時間目~社会~「歴史オタクの恋物語」巫夏希
本書を制作するにあたって、急遽募集したゲストライターだったが、真っ先に手を上げて引き受けてくださったのが巫先生であった。ややシニカルで棘のあるトレンディな文体が非常に特徴的。深い関係にある二人の仲介として逡巡する、ひとりの女子生徒の姿がきわめて現代的な視点で描かれている。展開および構成は古典的でありながら、現代的なテーマを内に秘めた、不思議な雰囲気を放つ作品である。
とまあ、こんなところだろうか。どの作品もそれなりに力を入れて批評したが、読み込んだものとそうでないものの差はちょっと出てきてしまっているなと言うのを自分で感じた。批評ももう少し頑張りたいなあ。
いいから原稿を書こうな。