「(仮称)日本ごうがふかいな協会」準備委員会広報

サイコパスクソメガネが祈る墓標みたいなやつ

秋の夕日に、てるやまもみじ(1976~)

 どうもおもちくんです。

 最近寒いですね。もっともこれで寒いとか言ってたら真冬どうすんのって話ですが。

 ということで、文フリ京都2シーズンが確定したので、まずは最終の選外まとめから書いていこうと思う。

 

「ニコイチの魔法」著:魚頭圭(DIMENCIA)

 現代とファンタジーが入り乱れる設定の世界で繰り広げられるライトノベル。カロリーがとんでもなく高いキャラクターたちをこれでもかと表情豊かに、滑らかに動かすことのできるこの書き手の名前をぼくは寡聞にして知らなかった。ここまで読んできた同人誌書き手の中でもかなり上位なんじゃないのかなあ。みたいな、そんな感じです。分量もかなりあって、設定も王道を踏まえつつオリジナリティがあってよかった。

 

「五つの小品」著:灰野蜜(イン・ビトロ・ガーデン)(レート:S)

 まんまる四天王が一角、灰野蜜氏の短編集。かなり前に発刊されていた最後のひとつを手に入れることが出来たもので、現在この短編集は廃盤となっている。

 堅牢な文体をもとに繰り出される灰野ワールドはこの時点ですでに完成されているといってよく、登場人物、とくに各話のヒロインに集中的にフォーカスされるように書き込まれていて、非常に深く没入できるのが本当にすごいところだ。読み終わったときに息もまともにできないような、そんな感じになる。素点では130を超える大台をたたき出したが高レートであるハンデによって記事化ラインから弾かれてしまった。

 

「戦場の風使い」著:にゃんしー(デスポリンキー食堂)(レート:A)

 にゃんしー氏のファンタジー小説ファンタジー小説、とはいえ氏の作風はわりと純文学とかファンタジーとかそういったジャンルの垣根がすごく薄い気がする。どれもにゃんしー氏独特の筆致で描かれているという点では同じジャンルのような読み方ができると思う。だが、この作品に関してはファンタジーであるという要素が物語にうまく働いていて、面白かった。舞台は戦争をしている二国の間にある戦地で、兵士であった主人公はなぜか敵国の女性に助けられて、言葉が通じないまま、敵国の兵士――不思議な能力を持つ少女たち――との交流を深めていく、というストーリーなのだが、言葉が通じない中でのバーバル、あるいはノンバーバルコミュニケーションのありようを臨場感あふれる文体で描いている。退廃し、暗い空気、そしてラストに近づいていくにつれてどんどん物悲しい展開になっていく中、彼女たちの持つ特異な能力がきらりきらりと光って、消えていくような、そんな印象を感じた。今まで読んだにゃんしー氏の作品の中では、最初に読むのがよいかと思う。もっともぼく自身わりと攻めた順番で読んでいるような気もするのだが。

 

「猫の頬に月」著:伴美砂都(つばめ綺譚社)(レート:B)

 正直に言うと、上の「五つの小品」からは素点(レート点を加味しない評点)が130点以上の大台をたたき出している強い作品なんですが、この作品も例外ではなくて、つばめ綺譚社の伴氏を代表するような小説群になるのではないかと思うんですね。主要登場人物群のひとりひとりを少しずついろんな角度から様々な時系列でスポットライトを当てていくという手法の作品集。クラスメイトとか、部活とか、そういった小さいコミュニティが積層されて今の自分はいるのだ、ということをすごく気づかせてくれるような、その小さくとも今後の人生に大きく影響しているコミュニティの中での独特な関係性というか、この人はそういうミクロな人物の掛け合いや心理描写に秀でているなあと思う。そういった意味では、先日紹介した「名前のない~」よりもこちらの方がより伴氏の強みというものを堪能できるのではないかと思う。どちらも素晴らしい作品なのは間違いないが。

 

under the rose」著:灰野蜜(イン・ビトロ・ガーデン)(レート:S)

 正直、これを読んだ時点ではこの作品が記事化ラインを外れるとは露ほども思っていなかった。はっきり言うと、灰野氏の強みが全てこの作品の随所に余すところなくちりばめられているといった、凄まじい中編なのだ。氏の堅牢な文体と高精細な描写は言うに及ばず、ヒロインの美しさ、リリカルとロジカルの交錯といった、時と場合によってはなりを潜めるような攻め玉すらも、余すことなく投げ切るという、豪華な作品に仕上がっている。もっとも、灰野氏のヒロインは例外なくすべてべらぼうに美しいのであるが、ここに描かれている「鞠子」はその中でもとりわけ美しい。この中編は、主人公が鞠子との出会いと別れを描いた作品であるが、別れの部分が非常に美しく、そして儚かった。灰野ファン必読の一冊。

 

常世辺に帰す(とこよへによす)」著:孤伏澤つたゐ ほか5名 (ヨモツヘグイニナ)(合同誌レート:1.1)

 ヨモツヘグイニナの最強にして最大規模の合同誌。日本神話語りなおしアンソロジーと銘打たれたこの作品集は、装丁もこだわりを感じさせるが、何よりすごいのは中身のテキストのレベルの高さである。まずトップバッターを並木陽氏がつとめるというところがすごい。てんやのオールスター天丼も真っ青の完全なるヨモツヘグイニナファミリー(?)のオールスター打線なのである。こんなの満塁ホームラン以外ありえないでしょっていう。

 ちなみに、合同誌のレートは、レート該当者がいた場合は、その該当者ぶんのレートをすべて足し合わせてから合同誌参加者数で割るという、平均レートを採用している。今回は孤伏澤つたゐ氏がレートに該当したため、そのレート6.6(ちなみにまんまる四天王最強、総合3位のレート)を6人で割ったのがこの合同誌のレートとなる。

 とにかく、すべての書き手が最大火力で寄稿しているという点では、ちょうど昨年の文フリ京都シーズンでご紹介した「無何有の淵より」と同じ特徴を持つし、どちらもヨモツヘグイニナというサークル名とも密接にかかわりあうというところで優れた合同誌である。そのパワープレイは本当に読んでみてほしいとしか言いようがない。

 

 以上が、惜しくも選外になってしまったものたちのまとめコメントである。

 ここから、3位以上の作品について記事でコメントしていこうと思う。

 3位となったのは、絶対王者の研ぎ澄まされた蒼がどこまでも広がっていくような、あの作品について書こうと思う。