ひざのうらはやおのメモ帳

サイコパスクソメガネが祈る墓標みたいなやつ

此岸を往く船は何で動いていても「こちら」のものではない

 どうもおもちくんです。

 作業が詰まりに詰まっているうえにどこもかしこも原稿に追われている。なのでこの記事を書いている時間もないといえばないのだが、だけれど書きたいと思ったから書くのであって、そういうことはどれだけ仕事が詰まっていようが関係ないのだ。

 

 霜月はるかという、同人世界でも商業の世界でも、シンガーとしてもソングライターとしても活躍している、知る人ぞ知る方がいるのだが、この人の同人レーベルの音楽に「落日の迷い子」という曲がある。合唱出身と聞いたことがあるが、この曲を聴くと納得する。ボーカルとそれ以外の旋律線がどれもメロディアスで、常にハーモニーを奏で続けながら変化していく進行で、それでありながらアコースティックでもないところが非常に面白い。氏が持っている創作の軸のようなものを垣間見ることが出来る。

 

「天満」著:織作雨

文体:28 空間:31 (半客観分野:59)

感覚:27 GF:33 (主観分野:60)

闇度:0.396 レート:なし

総合:119.396(文フリ金沢4シーズン 3位

 

 ということで、織作雨(おりさく あめ)氏による短編集が今回の文フリ金沢シーズンの3位となった。半年以上前なので、どうやって手に取ったのかが全く記憶にないのだが、結論から言うとこの作品を手に取ってよかったと思う。

 5篇の短編からなる短編集であるが、そのどれもが平易な文体でありながら非常に深くえぐるような幻想色を出してきているのが心に刺さった。幻想文学、ともまた違う趣ではあるが、方向性としてはファンタジーというよりはそっちに近いように思う。ぼくは幻想文学があまり得意ではないのだが、その苦手である文体の不必要な重さというものがなく、柔らかめで、とても読みやすい。しかも、そうでありながら強い幻想感を漂わせられるというのがこの書き手の文体の強みであると思った。舞台や方向性はバラエティに富む一方、その文体が通貫されていて、短編集として非常に読み応えがあり、かつ、この書き手の凄みというものを感じ取れる作品になっていた。この方の他の作品を読んだことはないのだが、他にも読んでみたいと思うし、そういう部分で、この作品集は氏のエントリーモデルになり得ると感じた。

 書き手本人は表題作を好きだとあとがきで明言しており、実際読んでみるとその力の入れようからそれを感じ取ることが出来るのだが、ぼくとしては巻頭の「消滅」の完成度の高さに舌を巻いた。主人公と妻の会話のやりとりがかなり自然で、こういった部分に非常に細かく入り込んでいくタイプの書き手であると思ったし、この衝撃でつづきを読もうと思ったくらいだった。

 全編を通して読みやすく、また、いろんなイベントに出ていくとのことなので、もし興味があれば読んでいただきたい一冊である。

 

 次回は、全国各地を飛び回るあの人気サークルの異色作について、書こうと思う。